シルバーウィーク。
7月末から8月にかけて歩いた裏銀座縦走から1ヶ月以上が経過し、完全に体の鈍っていた僕は、あまり攻めた登山はせずに、まったり楽しく歩ける場所を探していた。
2泊3日くらいでどこかいい場所はないかと考えた結果、昨年紅葉の時期に歩いた涸沢に行くことにした。昨年は天候の関係でピークを踏まずに紅葉だけ楽しんで下山したが、今年は滞在期間中は天気が良さそうだから、奥穂高岳か北穂高岳の頂上まで登る予定。

秋の涸沢といえば紅葉だが、シルバーウィークの段階では紅葉には少し早く、涸沢ヒュッテのホームページで確認した段階では3割から4割程度とのことだった。
金曜日の夜に自宅を出発し、沢渡大橋駐車場で車中泊。
9月下旬にさしかかった上高地周辺は結構寒かったが、数人で車の中で寝ていたこともあってか車内の気温はそれほど下がらず快適だった。
朝の5時過ぎ発の上高地バスターミナル行きのバスに乗り上高地へ。
上高地バスターミナルを出発
朝の5時半。
シルバーウィークということもあってかなかなかの混み具合。
準備運動を済ませて出発。
上高地バスターミナルから明神、徳沢、横尾とそれぞれ1時間ずつくらいの間隔で休憩ポイントがあるので序盤は非常に歩きやすい。
スタートから3時間ほど歩くと横尾という場所に到着する。
ここは涸沢へ向かう道と槍ヶ岳へ向かう道が分岐していて、どちらに行くにせよここから先が本番ということで、みんなしっかり休憩をとっていた。
僕たちも横尾でしっかり休憩をとってから出発した。
横尾の紅葉状況
昨年の10月に撮影した横尾大橋。
周囲は完全に紅葉していて、奥に見える山もしっかり色づいている。
そして本日の横尾大橋。
紅葉はまだまだ。
横尾大橋を越えるとようやく登山道らしい道になってくる。
本谷橋で休憩
横尾から1時間くらい歩いて本谷橋という吊り橋に到着。
この先から本格的な登山道になってくるので、本谷橋でしっかり休んで涸沢までラストスパート・・・というのが一般的な歩き方になっている。
我々も荷物を下ろして少し休憩した。
休憩後は気合を入れて涸沢に向けて出発。
天気予報は晴れのはずだったのだが、涸沢に近づけば近づくほど雲行きが怪しくなっていく・・・。
涸沢に到着
12:30
涸沢に到着。
天気は残念ながら曇り空。
まずはテント場の場所取り。これを後回しにしていると大変なことになってしまう。
テントを設営
シルバーウィークでテント場が混雑するだろうと思い早めの到着を目指して頑張って登ってきたが、すでにテント場は無数のテントが張られていた。
テント場の受付は13時にならないと開かないため、テントを設営してから小屋の列に並んだ。
写真中央左くらいに見える行列がテント場受付を待つ人々。
料金は1日1人1,000円。
2日滞在するため2,000円を支払った。この料金には涸沢ヒュッテの水場とトイレの利用料が含まれているため、小屋まで行けば水とトイレは自由に利用できる。
涸沢ヒュッテのパノラマ食堂でビール
テント場の受付を済ませたあとはコレ。
このために登ってきたと言っても過言ではない。涸沢ヒュッテのテラス席がタイミングよく空いたため、しばらくテラスで飲みながら目の前に広がる景色を楽しんだ。
この日の涸沢周辺は雲の動きが活発で、テント場周辺もガスったり晴れたりと非常に忙しそうな空模様だった。
テラスからテント場に戻り、早めの晩御飯を食べ、明日の予定について話し合った。
翌朝は早めに出発して北穂高岳に登り、北穂高小屋に到着した段階で奥穂高岳を目指すかそのまま下山するかを決めることにした。
就寝
昼過ぎに到着した涸沢だったが、あれこれと色々やっていたらあっという間に時間が過ぎてしまい、日が暮れたところで各自テントに入り寝ることに。
夜に何度かトイレで目が覚めたのでカメラ持参で夜の撮影。
光の軌跡のようなものは宿泊者のヘッドライト。スローシャッターで撮影するとこういう写真に仕上がる。
混雑したテント場はあまり好きではないが、こういう写真を撮る時にはうってつけだ。
日中は雲が出たり消えたりで忙しそうな空だったが、夜は空一面に星が広がっていた。
昨年よりかは星空撮影はマシになったが、それでもまだまだ物足りないレベルである。場面場面の上手な写真の撮り方を時々本やネットでチェックしたりはするのだが、その時限りでいつも現場に来て「あれ、どうやって撮るんだっけ?」となってしまう・・・。
涸沢から北穂高岳へ
4:00
少し前に起床し、朝食を食べ、出発の準備を整えた。
2日目は北穂高岳に登り、その時点の時刻や体調を考えて先を考える計画。
あわよくば涸沢岳を経て奥穂高岳のピークを踏むつもり。この日は雲が多くモルゲンロートを見ることができなかった。
5:00
テント場を出発。
日帰りのピストンもしくは周遊登山であるため、不要な荷物はすべてテント内に置いてきた。
どんどん登る
涸沢小屋の脇を通りしばらく階段を登り、その後は岩がゴロゴロした歩きづらい道をペンキを頼りに登っていく。
どんどん小さくなっていくテント場。
クサリ場をよじ登ったり、ハシゴを登ったり、北穂高岳への登山道はどうやら「よじ登る系」らしい。つづら折りのような場所をジグザグと登るよりこっちのほうが楽しいし、高度もどんどん稼げるから一石二鳥だ。
それにしてもすごい数のテントだ。
非常警報
先行者やペンキを頼りにぐんぐん登っていく。
突然僕のトイレカウントダウンが始まった。
北穂高小屋まではまだ結構距離があるし、森林限界を超えた岩稜帯なので身を隠すような場所がない。これは心を無にして北穂高小屋に最速で向かうしかない。
同行者に「ちょっと訳あって先を急ぐので小屋で待ち合わせよう」と告げて先を急いだ。
北穂高岳のテント場。
雲ノ平のテント場は山小屋か歩いて20分くらいかかるという話だが、北穂高岳のテント場もなかなかの立地のような気がする。(北穂高岳のテント場にはトイレがなく小屋まで行かなければならない)
もう一息。
トイレが僕を待っている。
北穂高岳登頂
7:50
テント場からしばらく歩いてようやく山頂に到着。
素晴らしい絶景!
登頂した喜びをじっくり味わいたいところだが僕の優先順位は登頂よりもトイレ。急いで北穂高小屋のトイレに向かった。(北穂高小屋は山頂からすぐ)
死に物狂いでトイレにたどり着いた僕の目に飛び込んできたのは看板に書かれた無慈悲な3文字。
清・掃・中!
北穂高小屋の絶景テラス
清掃中のスタッフに断りを入れてトイレを使わせてもらい、事なきを得た僕は北穂高小屋のテラスで仲間が来るまで休憩することにした。
北穂高小屋のテラスは絶景だというのはネットや書籍などでよく目にしていたが、想像以上の素晴らしさだった。
燕山荘、大天荘、大天井ヒュッテ、ヒュッテ西岳などが見えた。
そして常念岳がズドン。
ここで生ビールを飲むことができたら最高だろうなあ・・・と思ったが、涸沢のテント場まで戻らなければならないため、飲みたい気持ちをぐっとこらえた。
まだ飲む時間でもないしね・・・。
テラスはあっとう間に満席に。
この日は特製の「おはぎ」が販売されていて、みんなそれを頼んで食べていたが、僕はあまり好みではないため購入したアミノバイタルを飲みながら後続の仲間を待った。
仲間が到着した時間とその後の休憩時間、そして奥穂高岳までのコースタイムを考慮した結果、今回は難しそうと判断してテラスでのんびりすごしたのちに下山することにした。
涸沢に戻る
下山途中のナナカマド。
このナナカマドは良い感じに紅葉していたが、他はまだまだといった感じだった。
涸沢を赤く染めるにはもう少しかかりそうだった。
北穂高岳から涸沢へ下る道は想像していた通り怖かった。
涸沢小屋で昼休み
13:00
涸沢小屋到着。
腹ペコだった僕たちは涸沢小屋で食事をすることにした。
涸沢ヒュッテと比較するとこちらは少し落ち着いた感じ。テラスの席もすんなり座れたし、売店もそれほど並んでいなかった。
涸沢ヒュッテのテラスも良かったが、こちらのテラスもなかなか。
とりあえず生。
・・・とカレー。
昨日の空模様とは打って変わってこの天気。
ビールもカレーもあっという間に胃袋に消えていった。
どんどんテントが増える涸沢のテント場
涸沢小屋で休憩したのちにテント場に戻ると、おびただしい数のテントが!
昨日到着した時は「ちゃんと張れる場所がなかなか見つからないなー」なんて言いながら設営場所を探していたはずなのだが・・・。
これがシルバーウィークの涸沢のテント場なのか・・・。
この日はテント場の受付もずっと行列ができていて、涸沢ヒュッテのパノラマ売店も想像を絶する混雑になっていたため、とてもビールなどを買い足せる状況ではなかった。
小屋の中の自動販売機も利用者が多すぎて釣り銭がなくなり千円札が使えなくなっていた。
少し飲み足りない気もしたが、こんな状況だったので昨日同様に早めに就寝し、明日は早めに起きてモルゲンロートに備えようということになった。
就寝
2日目終了。
夜にトイレに行ったが、この日も星空全開で素晴らしかった。
涸沢のモルゲンロート
最終日は下山するのみ。
昨日と同じように4時に起床し、下山の準備を整えつつ日が昇るのを待った。
穂高岳山荘に向かう人たちはすでにザイテングラートに取り付いていて、ヘッドライトの明かりがちらほらと確認することができた。
日が昇る方角の雲が少しずつ赤く染まっていく。
ちょっと雲が多すぎて涸沢カールが赤く染まるのか心配だったが・・・。
ダメかなと思っていたら、山肌が徐々に赤みを帯びてきた。
昨年に続き今年も無事にモルゲンロートを見ることができた!
やっぱり涸沢はこうでないとね。
下山
無事にモルゲンロートも見れたし、あとは下山するのみ。
テントを撤収して涸沢ヒュッテで念のためにトイレに行く。
涸沢ヒュッテのトイレの行列
出発前にトイレを済まそうと涸沢ヒュッテに向かうと長蛇の列が・・・。まあ小屋泊とテント泊でこれだけの人が訪れているのだから仕方がないよね。
きた道をサクサクと戻り、徳沢で定番のソフトクリームを食べ、さらに歩いて小梨平キャンプ場のトイレで用を足し、バスターミナルへ向かった。
13:00
河童橋到着。
昨年もそうだったが、徳沢くらいから徐々に登山者ではない人たちが目につくようになり、河童橋周辺に着く頃には一般観光客と登山者が入り混じる異空間が出来上がっていた。
バスターミナルに着くと臨時便が出るくらい凄まじい人・人・人で長蛇の列が数本出来上がっていた。おそらくこの列はずっと続くだろうと考えた僕たちは、さっさと並んでバスに乗って駐車場に戻ることにした。
僕たちが並んだ沢渡大橋行のバスの列も相当な人数だったが、バスが増便していたおかげでそれほど待たずに順番がまわってきた。
疲れていた僕はバスに乗った瞬間に爆睡。気が付いたら終点の沢渡大橋に到着していた。
そして帰りの中央自動車道は予想どおりの超絶大渋滞。
登山よりも帰りの運転のほうが疲れたような気がする。
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