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翌朝。
テントの外に顔を出してみると、空が薄明るくなっていた。
雲ひとつない快晴。
僕はカメラを持ってテントを飛び出した。
常念小屋の朝
薄暗い空と地面の間にオレンジ色のラインが入っていく。
そして・・・。
昇ってきた太陽が槍ヶ岳と大キレットを赤く染めていく。
素晴らしい朝の時間を堪能したあとは撤収。
結露で濡れたテントをバックパックに収納し、準備を整えて常念小屋を出発した。
常念岳へ
さらば常念小屋。
前日は分岐から常念小屋に下りながら「明日はここを登るのか・・・」とげんなりしながら歩いたが、登り始めてみるとそれほど大変ではなかった。
常念岳の山頂に到着。
山頂は思っていた以上に狭く、記念撮影の行列ができていた。
とりあえず来た証拠にと写真を撮るが、撮影する自分の影や関係ない人が写りこんでしまい、なんとも微妙な山頂写真となってしまった。もう少し落ち着いて撮りたかったが、後ろに撮影の順番を待つ他の登山者が並んでいたので先へ進むことにした。
山頂のすぐそばに穂高連峰を一望できる展望スポットがある。
左から前穂高岳、奥穂高岳、涸沢岳、北穂高岳、そして大キレットを経て槍ヶ岳。
常念岳から蝶ヶ岳へ
常念岳の山頂で絶景を楽しんだあとは蝶ヶ岳に向かう。
蝶ヶ岳に続く道はアップダウンに富んだコースになっていて、まずは常念岳山頂から一旦下る・・・。
そして下りきったあとに待っているのは登り。
コバイケイソウが群生していた。
2592ピーク
2592ピークに到着。
そして看板の矢印が指す方向に視線をもっていくと・・・。
せっかく登ってきたのにまた下り。
登り返した先には小さく突起した蝶槍が見える。
足元に群生しているニッコウキスゲたちが疲れを紛らわせてくれた・・・ような気がする。
ここまで来ればあと少し!
・・・と自分で自分を励ましながら先へ進んだ。しばらく下って樹林帯に入り、そこから蝶槍に向けて登り返す。
ようやく蝶槍が見えてきた。
2592ピークからここまでの記憶がほとんど残っていないのは無心になって歩いていたからなのか、脳が機能停止していたのかは分からない。
蝶槍
蝶槍に到着。
右を向けば穂高連峰の見事な絶景が視界に飛び込んでくるのだが、常念小屋からここに至るまでにこれでもかというほど穂高連峰を見てきたことで見慣れてしまった。
絶景慣れ。
なんとも贅沢で勿体ない状態である。
蝶槍を振り返ったところをパシャリ。
ここまで来れば蝶ヶ岳ヒュッテはそう遠くはない。
蝶槍を超えれば蝶ヶ岳ヒュッテに着いたも同然と思っていたが、そうでもなかった。基本的には緩やかで気持ちの良いトレイルなんだけど、僅かな登りで失速してしまうのは疲労がピークに達していたからだと思う。
蝶ヶ岳ヒュッテに到着
そしてようやく蝶ヶ岳ヒュッテに到着。
小屋に入り自動販売機でコカ・コーラを買う。
乾ききった体にコカ・コーラ(400円)が染みていく・・・一気飲みに近いかたちで飲み干してしまう。
しかしこの量ではまったく足りない。
同じ容量の三ツ矢サイダー(400円)、オレンジジュース(400円)を次々と購入し飲み干していく。ようやく体が落ち着いたところで水を1リットル(200円)購入しペットボトルに補充した。
蝶ヶ岳ヒュッテに到着してものの数分で1,400円が財布から消えた。
テント泊はせずに三股へ下山
小屋でジュースを飲みながらこの後のことを考えていた。
時刻はまだ午前11時前。
ここまでの道中でだいぶ疲れていたが、まだ時間も早いので当初予定していた蝶ヶ岳でのテント泊をやめて三股に下山することにした。
楽しそうに山頂で記念撮影している人たちを横目に下山を開始。
その後は淡々と歩き続けた。
ゴジラみたいな木まで来た。
あとひと息。
・・・と思っていたが、ゴジラみたいな木を通り過ぎ、吊り橋を渡ってもまだまだ先は長かった。
森の広場駐車場まで戻り、身支度を整えて出発した。
この日は3連休の中日で駐車場は相変わらず満車状態だった。そして道路脇に駐車している車の台数に驚かされた。「こんなところから登っていくのか?」と思ってしまうくらい先のほうまで路上駐車が続いていた。
喉が渇いていたので高速道路に乗る前にドラッグストアに立ち寄った。
喉はカラカラ、日に焼けた両腕は真っ赤。
帰りに飲む当面の飲料に加えてシーブリーズとガリガリ君ソーダ味を購入した。そして駐車場でガリガリ君にかじりついた。ガリガリ君ソーダ味ってこんなに美味かったっけ?と思うくらい衝撃的な美味さだった。
その後は長野自動車道から中央道に乗り継ぎ、中央自動車道で道路を埋め尽くす真っ赤なテールランプの列に僕も参加した。なかなか進まない車内でハンドルを握りながら僕は思った。
「蝶ヶ岳でもう1泊していたほうが良かったかもしれない」
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