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午前3時。
烏帽子小屋のテント場を午前4時に出発するため、午前3時に起床して出発の準備を整えた。
2日目はここから野口五郎小屋まで移動し休憩、その後に野口五郎岳山頂を通過し、水晶小屋にバックパックをデポして水晶岳へ、荷物を回収して鷲羽岳を経由して三俣山荘のテント場へ・・・という計画。
昨晩は断続的に降った雨によってテントのフライシートの表は雨で、裏側は結露でびっしょり濡れていた。これを乾かしてから出発する時間の余裕はないため、濡れた状態のままスタッフサックに畳んで入れ、さらに濡れを防ぐためにビニール袋の中に放り込んだ。
諸々の準備が整い午前4時に烏帽子小屋のテント場を出発した。
烏帽子小屋のテント場から野口五郎岳へ
烏帽子小屋のテント場を出発してしばらくはヘッドライトの灯りを頼りに歩いた。
木々に囲まれたテント場を抜け、少しずつ標高を上げていくと雲海の向こう側から太陽が昇ってきた。
前日の天気のせいもあって眼下には見事な雲海が広がっていたが、雲の量が多くご来光は拝めなかった。
ただ雲の切れ間から差してくる陽の光はなかなか神々しいものがあった。
しかしそんな朝の時間帯はつかの間。
あれよあれよと周囲はガスにのまれ視界は数メートル先までしか見えなくなってしまった。その後はガスに交じってミスト状の霧雨が降ってきて、レインウエアを着るかどうか微妙な状態がしばらく続いた。
野口五郎小屋に到着。
小屋の中でバックパックを下してペプシコーラを飲みながら無印良品のバナナバウムを食べてしばし休憩。
途中から降ってきた霧雨がバックパックを思いのほか濡らしていた。
休憩後はバックパックにレインカバーを取り付けて野口五郎岳に向けて出発。
野口五郎岳の野口五郎はあの野口五郎のことで、野口五郎が野口五郎岳から名前をとったと言われている。そんな野口五郎岳の山頂に到着するも展望はなし・・・。
野口五郎岳から水晶小屋へ
野口五郎岳の山頂からしばらくの間は歩きやすいトレイルが続いた。時折雲の切れ間から景色が開けることもあるにはあったが、それは絶え間なく移動し続ける雲の切れ間でしかなく時間はごく僅か。
もう少し天気が良ければ・・・。
東沢乗越までいったん下り、そこから水晶小屋へ登り返す。
この登り返しが結構大変で、無心になって1歩1歩と進み、ようやく水晶小屋に辿り着いた。
水晶小屋では三ツ矢サイダーを買って外で休憩。
こんな天気だから到着直前の急登で上昇していた体温が一気に下がる。
僕は悪天候時のピークハントにはまったく興味がないため、当初考えていたバックパックをデポして水晶岳に登るプランは当然なしに。ここに来るのは2度目だが前回と同様に今回も水晶岳をパスすることになるとは・・・。
休憩後の出発前に水晶小屋のトイレに入ってびっくり。どうやら水晶小屋は2017年に助成金を受けてバイオトイレを増築したようで、とても綺麗なトイレだった。最新型のバイオトイレらしく専用のトイレットペーパーをそのままトイレに流すことができる仕組みになっていた。
鷲羽岳も諦め黒部源流を経由して三俣山荘へ
水晶小屋に到着した時点での天気を考慮して鷲羽岳には登らずに歩いたことのない黒部源流を経由して三俣山荘に向かうコースを選択することに。
ワリモ北分岐、岩苔乗越を経由して黒部源流に向かってひたすら下る。
水が豊富な沢沿いには高山植物が群生していた。
黒部源流に向かって下っていくにつれて雲の切れ間から青空が見えてきた。
一時のものなのか天候が回復しているのか?もしかしたらという期待が高まる。
沢沿いを下っていくにつれ、斜面からの複数の支流がどんどん合流し、水量が徐々に増えていく。昨晩の雨もあってか登山道にも支流からの水が流れており足元はとても滑りやすくなっていた。
三俣山荘のサイトにはワリモ岳直下の斜面から湧き出る水が黒部源流の最初の一滴ということで紹介されていたが、それがどこだったのかを確認することができなかった。
沢を下りきったところに黒部川水源地標があった。
岩苔乗越からここまでのコースタイムは30分程度なのに僕はなぜか1時間かかってしまった。
なぜ?
黒部源流まで下りきったあとは三俣山荘に向けて登り返す。
ここまで来る間に見えていた晴れ間は一時だけのものではなかったようで、どうやら天候は回復傾向にあるようだった。こんなことなら鷲羽岳に登っておけば良かったと後悔するも時すでに遅し。
三俣山荘に向けて黙々と足を勧めた。
三俣山荘に到着
三俣山荘に到着。
小屋の入口の反対側には槍ヶ岳が!
「とりあえずビール」といきたいところだがテント場の場所を確保するためにまずは受付でテント泊の申し込みをして場所の確保のためにテント場へ。
三俣山荘のテント場
三俣山荘のテント場は三俣山荘から三俣蓮華岳方面へ縦長に続いている。
ここはテント泊用のトイレがなく小屋の中のトイレを利用する。あまり離れた場所にテントを設営すると小屋で買い物をしたりトイレを利用したりする際の移動が面倒になるため、小屋から近い平坦な場所を探してテントを張ることにした。
小屋から比較的近く、鷲羽岳がよく見える場所を確保することができた。
インナーテントだけ設営し、近くにあった巨大な岩の上に濡れたフライシートを広げてしばらく乾かした。
三俣山荘の展望食堂へ
テント場での設営準備もひと段落したところで三俣山荘の展望食堂で腹ごしらえ。
山小屋はどこもだいたい昼前から午後3時くらいまで喫茶メニューをやっていて、カレーライスやラーメンなどの定番メニューを提供している。三俣山荘も夕飯の提供時間以外はご覧のようなメニューで展望食堂を開放している。
展望食堂は小屋泊の人は小屋の中から、テント泊や立ち寄った人たちは外からアクセスできるようになっている。
土足のまま入ることができるため小屋の中から行くよりも外階段を利用したほうがいいと思う。
まずはラーメンを注文してビールとともに頂く。
食べる前に写真を撮ろうとカメラを持ってきたのに、それを忘れてがっついてしまい食べている途中で「あ!」と気付く・・・。
展望食堂はその名の通り周囲の絶景を楽しむことができる素晴らしい場所。
ただ今回は窓の向こうの槍ヶ岳はすでに雲の中。
到着した直後はよく見えたんだけど・・・。
食後は展望食堂の外のベンチに出て追加購入したビールを飲みつつ、ジップロックに入れてきた柿の種をつまみに午後のひと時を満喫した。
早朝に烏帽子小屋を出発して水晶小屋に到着した時には天気がここまで回復するとは思わなかった。
槍ヶ岳は雲に隠れてしまったけど鷲羽岳直下のこの素晴らしい場所で、美味しいビールを飲みながらこうしてのんびり過ごすことができて本当に良かった。
三俣山荘で「ジビエシチュー」を食べる
普段テント泊をする際は持ってきた食料を食べるようにしているが、今回は三俣山荘のジビエシチューが食べて見たかったのでテント泊の申し込みの際に小屋泊の方々に提供される晩御飯をお願いしていた。
17時に展望食堂へ行き、事前に受け取っていた食券を小屋のスタッフに渡すと「ではこちらにどうぞ」と席に案内された。
夕食の内容は鹿肉を使ったジビエシチューに、キャベツの千切りとポテトサラダとフルーツが乗った小皿、ご飯とお茶はおかわり自由。
夕食は着席の段階ですでに配膳されており、ご飯をよそってすぐに食べ始めることができる。
今回の旅の目的のひとつでもあるジビエシチューは、鹿肉・人参・トマト・玉ねぎなどがじっくり煮込まれており、具材はどれも柔らかくスパイスの効いたソースの味がしみ込んでいてとても美味しかった。
就寝
夕食の時間が終わると展望食堂や夜の営業に切り替わる。夜喫茶も利用してみたかったけど翌日は双六小屋を経由して新穂高温泉に下山するため、テントに戻って寝る準備。
例によって浅い睡眠が続き、何度も何度も目を覚ましながら朝を迎えることになった。
最終日の天気は残念ながら・・・
午前3時に起床してテントを撤収して4時に三俣山荘を出発。
ヘッドライトを点けて三俣蓮華方面へ登る。朝からひどいガスで数メートル先までしか見えない。三俣蓮華岳と双六小屋への巻道の分岐点に到着した時点でもガスが晴れる見込みがなく、ここから山頂を目指してもガスの上に出れそうにないなと判断し、巻道から双六小屋を目指すことに。
双六小屋への巻道はそれほど大きなアップダウンもなく割と歩きやすかった。
双六岳山頂と双六小屋の分岐に到着するも相変わらずの天候。
こんな天気ならあえて登る必要は無いと判断し、このまま双六小屋へ向けて下ることに。
結局今回の登山でピークを踏んだのは通り道だった野口五郎岳だけという結果に^^;
分岐から双六小屋はあっという間。
天候はいまいちだったけど、お盆の時期ということもあってか双六小屋前は出発準備を整える登山者たちで賑わっていた。
双六小屋でトイレを済ませ、買ってきたコーラと持ってきた無印良品のバナナバウムをいただく。
新穂高温泉に向けて下山
休憩&朝食をとり新穂高温泉へ。
双六小屋のテント場を通り先へ進む。ここから先はずっと下りだと思っていたら、そうではなく暫くの間は登り返し区間になっていて少々気持ちが萎える。
しばらく登ったあとはひたすら下り。
歩いて歩いて鏡平山荘へ。
この辺りは槍ヶ岳の展望が素晴らしい場所・・・らしい。
あいにくの空模様で槍ヶ岳は見えず、鏡平と呼ばれる所以となっている池に映る槍ヶ岳も見ることができなかった。
鏡平山荘でトレイと水分補給をすませて出発。
黙々と下り坂を歩き続け標高を下げていく・・・。
そして林道へ。
ここまで来ればもう下山したも同然。
林道をしばらく歩くと、わさび平小屋に到着する。
コカ・コーラでエネルギーチャージ。
ぷかぷかと浮いているフルーツがとても美味しそうだった。
僕はコーラで十分満足できたためフルーツには手を出さずに先へ進むことに。
わさび平小屋までくれば下山したも同然!とばかりにビールを飲んで談笑している登山者が数名おり、僕も手が出そうになったけど、ビールは風呂に入ってからと決めていたため、飲みたい気持ちをぐっとこらえて新穂高温泉に向けて出発。
そして新穂高温泉に到着。
中崎山荘 奥飛騨の湯で登山の疲れを癒す
新穂高ロープウェイから少し歩いたところにある中崎山荘奥飛騨の湯に向かう。
新穂高に下山してきた時はいつもこの温泉を利用している。
到着時点では外にバックパックが並ぶほど混雑していたが、ここを出る頃には荷物は結構減っていた。
温泉に入ったあとは美味しいビールを飲みながら、そうでもないラーメンを食べて空腹を満たす。
食後は帰りのバスの時間まで隣の休憩室で、リピート再生されている槍ヶ岳の映像を眺めながらストレッチをしたり横になったりビールを飲んだりして時間を潰した。
帰りの中央自動車道は大渋滞
バスの出発時間が近づいてきたところで中崎山荘を出てバスが停車している駐車場に向かう。
15時前に新穂高温泉を出発したバスは順調に中央自動車道の渋滞にハマり、新宿に到着したのは22時過ぎ・・・というわけで2泊3日の北アルプス裏銀座途中下山の旅がこれにて終了。
道中の不安定な天候で周辺の景色を存分に楽しむことはできなかったものの、2日目の午後に訪れた僅かな晴れ間を三俣山荘ですごせたのが救いだった。
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