北岳は富士山に次ぐ国内第2位の標高を誇る南アルプスの主峰。
もともとは北岳、間ノ岳、農鳥岳の3つの山は白峰山と呼ばれていたようで、その後3つの峰に名前を付ける際に、一番北にあるから北岳と名付けたのだとか・・・。
標高第2位の山にしては随分と安易な名前の付け方だなあと思いつつ、昨年1位に登ったので今年は2位に登ろうという安易な考えの僕もどうなんでしょうね。
南アルプス市芦安観光第2駐車場で車中泊
今回登る北岳や、同じ南アルプスの仙丈ヶ岳や甲斐駒ケ岳は、マイカー規制により車で登山口まで行くことができない。
この辺りの山に登る場合は芦安か奈良田の駐車場に車を停めて、早朝出発のバスか乗合タクシーで登山口まで移動しなければならない。
仕事を終えた金曜日の夜に自宅を車で出発し、南アルプス市芦安観光第2駐車場に車を停めて翌朝まで仮眠をとった。
朝の4時に起床し準備を始め、第2駐車場に発着している乗合いタクシーに乗車し5時過ぎに出発。北岳登山口の広河原まで移動した。
広河原から登山口へ
1時間くらい車に揺られ到着するとすでに広河原インフォメーションセンターは混み合っていた。
北岳はここから登山口まで歩いてすぐだが、仙丈ヶ岳や甲斐駒ケ岳の場合はさらに乗り換えて移動する必要があるそうだ。
広河原インフォメーションセンターの左脇の道路を歩いていくと吊り橋があり、そのすぐ先に登山口がある。
登山届を提出して6時過ぎにスタート。
いざ北岳へ!
しばらくの間は樹林帯を歩く。
ただ淡々と登るのは辛すぎるため、時折休憩を兼ねてカメラで適当に写真を撮る。
途中長靴を履いたオジサンが僕をひょいと追い抜いてどんどん登っていった。やはり慣れた人の身のこなしは違うなあと感心してしまった。
白根御池小屋
2時間ほど歩いて白根御池小屋に到着。
まだまだ先は長い。
白根御池小屋では南アルプス”の”天然水が蛇口から出てくる。
南アルプスの湧水だから「南アルプスの天然水」であって、市販されている「南アルプス天然水」とは別物。(サントリーの南アルプス天然水は北杜市白州町で採水されている)
ここで水を汲んでいきたいところだが、バックパックのハイドレーションには昨夜コンビニで購入した「南アルプス天然水」が入っているため、ここでは洗顔とうがいに使わせてもらった。
そして休憩後に待ち受けている急登にそなえていつものアミノバイタルを飲んだ。
急登の草すべり
ここからが正念場。
急登の草すべりを登る。
草すべりは砂利のつづら折りの道を延々と登っていく。
ほんの少し前に休憩したはずなのに登り始めてすぐに息が上がってしまった。
ただ足元に咲く花たちは心を和ませてくれる。
無理せず花でも見ながらマイペースで登ればいいじゃないか・・・という気分になってくる。
森林限界
草すべりの先は森林限界。
見晴らしの良い景色が広がる。
登山は基本的には山頂を目指すものだが、景色を楽しみながらのんびり歩くのも山歩きの醍醐味のひとつだと思う。
仙丈ヶ岳や甲斐駒ケ岳がよく見えた。
そして南アルプスからは標高第1位の山がよく見える。
安定の存在感。
富士山は僕が登山を始めるキッカケになった山だけど、また登りたいとはあまり思わない。ただ富士山が見えると嬉しいし気持ちが昂る。
僕のなかでは富士山は登る山ではなく見る山なのかもしれない。
北岳肩ノ小屋
10時52分。
北岳肩ノ小屋に到着。
6時過ぎに出発したので休憩込みで5時間弱ってところだろうか。
もっとのんびり歩いて来ても良かったかもしれない。小屋とその周辺は現在工事中らしく、あちこちに資材が置かれていた。
当初の予定ではここから北岳に登って、その先の北岳山荘にテント泊する予定だった。
そして翌日はテント場から空身で間ノ岳(標高第3位)をピストンし、撤収して来た道を戻るというプラン。
現在時刻は11時。
時間的には十分余裕があるものの、ここに来るまでの間に体力を消耗していたし、翌日の下山のことを考えるとちょっと北岳山荘まで移動するのは厳しいかもしれないな・・・と思い、ここに1泊することに決めた。
間ノ岳にも登りたかったが、それはまた次の機会ということで。
北岳肩ノ小屋にテントを設営
テント場はガラガラ・・・というかまだ誰も設営していない。
というわけで場所は選びたい放題。
見晴らしの良さそうな平らな場所を選びサクッとテントを設営。
山頂に向かうための準備を整えた。
テント場からの見晴らしは素晴らしいが、テントを設営している間に雲がもくもくと増えていって富士山が徐々に隠れていってしまった。
ちょっと嫌な予感が頭をよぎる。
山頂でガスるのは最悪なので急いで仕度をして出発した。
北岳の山頂へ
荷物を極限にまで減らして山頂へ。
背負って来た荷物をほぼテントに置いてきたおかげで足取りが軽い。
山頂が見えてきた。
視線を右に向けると北岳山荘とそこから間ノ岳へ伸びる稜線が目に入る。
あそこまで行きたかったし、あの先を歩きたかった。次は3日間休んで白峰三山を縦走だ!そう思いながら頂上を目指した。
北岳の山頂に到着!
北岳の山頂に到着!
昨年登った富士山に続いて標高第2位の北岳の頂に立つことができた。
この看板の向こう側はまだ雲も少なく見晴らしが良かったのだが、反対側の富士山はすでに雲に覆われてその姿は見えなくなっていた。
もしかしたらこれから徐々に天候が悪化してくるのかもしれない。
天気予報も夜から明日の午前中にかけて雨が降るという予報だったし、長居は禁物かもしれない。 しばらく休憩してテント場に戻った。
恐怖のテント泊
肩ノ小屋で缶ビール2本とポテトチップスを購入してテント場でのんびり休憩。
まだ時刻は13時を過ぎ。
山頂に向かう途中で見た北岳山荘とその先の風景を思い出しながら、もうちょっと頑張って先に向かうべきではなかったかと自問していたが、刻々と変化していく天候を目の当たりにしてこれで良かったのだと納得した。
しばらく休憩しているとあたりはガスで覆われテント場からの展望はほぼ無くなってしまった。
その後はテントで横になってゴロゴロ寝たり起きたりを繰り返し、夕方にアルファ米にカレーをかけて食べた。
少し冷えてきたので寝袋に入って横になるとテントのフライシートにポツポツと雨が・・・。
燕岳に登ったときのように夜には綺麗な星空が見ることができるかもしれない・・・という僅かな期待を胸に眠りについた。
・・・少し眠って目を覚ましたところ僕の期待通りの天気になっていないことを即座に理解した。
テントに吹き付ける風と雨。
これまで経験のしたことのない強風と、それに乗ってフライシートに叩きつけられる雨に震えあがった。あまりの強風でテントが飛ばされてしまうのではないか?という恐怖から、内側からテントの揺れを手で押さえた。
ふと気付くとテントの前室の反対側のフライシートがバタバタと音を立てている。どうやらペグが抜けてしまったようだ。
朝までだいぶ時間があるし放っておくわけにもいかないと思い、レインウエアを着込んでテントの外に出て抜けたペグを元通りにし、簡単に抜けないように重りの石を多めに置いた。他のペグもチェックし同様に石を多めに置き、風に対する対策を施した。
新調したゴアテックスのレインウエアをまさかこのようなかたちで使う事になるなんて思いもよらなかった。
その後も風雨は続き、朝までまともに眠ることができなかった。
下山
天気予報では雨は降っても午前中までということだったから、運が良ければ朝には晴れるかもしれないと思っていたが朝になっても雨は止まなかった。
6時を過ぎると徐々に雨足が弱まってきたのでテントを急いで撤収して6時20分に下山開始。
上下レインウエア着てカメラをバックパックに入れていたので下山時の写真は殆ど無い。
徐々に回復していく山の天気に複雑な感情を抱きつつ、疲れた体に鞭を打ちひたすら歩く。
ここ最近は下山時の足の踏み込み方に注意していて、足が地面に着地する際の衝撃が膝に影響しないように、なるべくつま先から足を着けるように意識している。
おかげで膝へのダメージの蓄積はかなり回避され、一時期は必ず発生していた膝の痛みが軽い違和感程度で済んでいる。
白根御池小屋まではコースタイムより少し早めに歩いて来ることができたが、そこから先の樹林帯は足の疲れがピークに達し、踏ん張りが効かなくなってしまい歩く速度が落ちてしまった。
ゴール
広河原に着いたのが10時30分くらい。
乗り合いタクシーが10時20分発なので、その時間までに下山したかったが間に合わなかった。次の便まで1時間の足止めか?と思いきや、人数が揃ったからということで臨時の乗り合いタクシーを出してくれた。
テント場で殆ど眠れなかった僕はタクシーの車内で爆睡した。
駐車場に着いたところで目の前にある白峰会館の温泉に入って汗と汚れを落とした。その後は車に乗って岐路に着いた。
中央道、圏央道、東名どこも渋滞せずスムーズに車を走らせることができた。
思いもよらない天気の変化に翻弄された1泊2日の旅だったが、北岳山頂までは天気にも恵まれ、気持ちのよい登山ができた。
今回目的半ばに終わった北岳登山は白峰三山縦走でリベンジしたい。
追記:2017.07.15~17で3年超しのリベンジを果たした!



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